【経験談】「病院事務職員の新人教育ってなにが正解なんだろう」20代職員の指導経験から紹介

火曜日, 11月 23, 2021

病院総務

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私は新人教育は非常に大切だと思っています。

新人教育に関する記事はネット上に数多くありますが、30代以上の先輩や管理職クラスの視点のものが多くないですか?

ですが実際には、入職数年目の20代が教育係を務めることも多く、前述のような記事を読んでも

「分かるんだけどまだそういうレベルの話じゃないんだよな~」と感じることはないでしょうか。

今回は、(自身も勉強途中である)20代で新人教育を行ってきた私の経験をもとに書いていこうと思います。

それではスタートです!

私自身社会人としてまだまだ発展途上ですが、これまでに新人の教育担当になったことが何度かあります。

今回はその経験や、新人指導の際に気を付けていたことを紹介していきます。

※新人教育の経験もまだまだですので、中堅やベテランの先輩方にとっては不足を感じたり、中長期で考えると誤った方針と思うこともあるかもしれません。

日本のどこかの職場でこういうケースもあったんだな、という程度にお読みください。

新人指導の際に気を付けていたこと

最初に業務の概要とゴールを教えた

病院という環境は、外からは分からないような見えないルールが多数存在しています。

また、医療に関する最低限の知識等がないとままならない業務もあります。

そのため私は、新人には担当する業務について知り得る全てのことをできるだけ最初に教えるようにしていました。

その理由は、すでに先輩職員が有している知識を使用しないのは新人、ひいては組織にとって損失だと考えているためです。

経済学やマーケティングにおいて、「後発優位性」という概念があります。

ざっくり言うと、後からスタートした国・企業の方が、先行事例や先行者の技術等を利用できるため、同じ水準まで早く成長できるというものです。

これは、人材育成においても同じだと思います。

後輩が育たなければ自分が優位な立場でいられる、後輩が成長すると出世争いのライバルになるから困る...そんな考え方をしている人は現代では少ないのではないでしょうか。

それよりも、一日でも早く後輩が成長してくれた方が業務のスピードも上がり、組織全体の底上げにもつながると思います。

こうした考えから、私は具体的には次のようなことを教えてきました。

業務のこれまでの経緯

新人教育の場では、業務の現状と将来起きうることについての説明に終始し、過去の経緯については触れられないことがあると思います。

ですが実際に業務を担当する段になると、過去にその業務がどのような変遷を経て現在に至っているかを知らないと、円滑に進めることは難しいです。

新人ほどまっさらな目で現在の業務を見るため、改善が必要な点も多く見つけてくれます。そして少しでも役に立とうと、改善に取り組もうとしてくれます。

ですが、それは過去に誰かがチャレンジして、結果として採用されなかったというものも少なくありません。

一般企業では利益につながりそうな良策も、病院においては患者にとって危険があったり不利益が生じたりすることから受け入れられないことがあります。

「〇〇先生が猛反対した」「改革前に重大な欠格が見つかって頓挫した」などで現状に至っているものもあります。

そのような経緯を知らずに同じことを繰り返してしまったがために新人に悪評がつくことを避けるためにも、経緯についてはきちんと伝えるようにしています。

あわせて新人には、過去の失敗例などの情報は改善や改革を諦めさせるためではなく、理想実現に向けて、より効果的なアプローチに役立ててほしいから教えている、ということも伝えています。

最終的なゴール、成果物、業務の全体像

イベント業務であればその実施の様子、各種調査や補助金であればその提出書類・購入物・改修施設を実際に見てもらうようにしています。

特に医療機器など名前だけでは分かりづらいものは実物を見てもらうことが効果的だと感じています。

百聞は一見に如かず、ということで、自分が行う仕事は最終的に病院にとってどのような効果をもたらすのか、どのような形にまとめ上げればよいのか、を最初に見ておけば、業務を進める際の指針が明確になり、引継ぎを受ける際の意欲や理解度も高まります。

この点を意識しだしてから、引継ぎ中の質問も増えたように感じます。

業務におけるキーパーソン、要注意人物

総務部門の仕事では、院内外の様々な人と協力して進める業務が多くなります。

特に病院は考え方が異なる多職種がともに働いてる環境です。

各職種における物事の優先順位や他部署との関係性は必ず押さえておくべきポイントです。

特定の診療科や部門トップの鶴の一声で停滞していた業務が急に進みだしたり、逆に暗礁に乗り上げたりします。

そうした重要人物に対する適切な対応方法は事前に教えておかないと、アプローチを誤り業務に支障をきたすことになりかねません。

道理にかなうと思って行う提案も、完璧に理論だてられたデータも、聞き手や受け取り方によって評価は大きく変わります。

そうした聞き手から少しでも良い評価を引き出すためには、交渉方法や人間関係が重要な要素となり得ます。

そのため、キーパーソンや要注意人物についての情報は、業務の進め方と同じくらい大切なものとしてはじめのうちに教えていました。

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上記の三点ですが、最低限の部分を教えた後は、今後も同じ方法で仕事を教えた方がよいか、それとも自分流にやりたいかを聞くようにしていました。

丁寧に教わることが助かると思う人がいる一方で、足かせになる後輩もいると思ったからです。

丁寧に教えることには時間もかかるので、新人の時間を奪っているとも言えます。

基礎知識を教えるという「手段」を、仕事を覚えて円滑にまわしていくという「目的」と混同しないよう気を付けていました。

現に早々と私のもとを巣立ち、自己流で成果を上げている優秀な後輩もいました。

年功序列を薄めようしようとした

最近では悪の権化のように取り上げられがちな「年功序列」ですが、組織の統制の面などではメリットもあると考えています(組織が良い方向に進むかは別問題ですが)。

しかし、私のいる組織では入職年が1年下なだけで意見も言いにくい状況であり、年功序列による負の面を感じていました。

とはいえ、教授を中心としたピラミッドで成り立つ大学病院において、事務組織といえ年功序列の文化を無くすことは現実的ではありません。

そこで、年功序列を廃止するのは無理でも上下3年くらいであれば気兼ねなく意見交換ができる雰囲気にしよう!と思い立ちました。

まずはじめに、「教えているなかで何か気になることや、こうした方が良いと思うことがあったら間違いとか気にせず遠慮なく伝えて。誰も気づいてこなかった問題の解決策があるかもしれないから。」といったニュアンスのことを伝えるようにしました。

ただ教えてもらうだけの教育だと自分の意見もあまり言えず、よく分からないままただ「作業」をすることになり、現状を改善していこう、というマインドも育ちにくいと思ったからです。

また、「システムの活用とか業務の進め方で便利な方法見つけたら先輩後輩なんて関係ないから気軽に教えて!」と伝えるようにしました。

新人は社会人経験こそなくても、学生時代やこれまでに培ってきた専門性の高いスキルや経験を有していることは多々あります。

年次が上の者から下の者に一方的に教えるだけでなく、下から上にも情報を気軽に共有していいんだよ!(むしろ助かるからお願い!)という雰囲気を作ろうとしました。

これらの取り組みにより、結果として良い面を沢山感じることができたので、そちらは後述します。

自分(教育担当)のやり方は必ずしも正解ではないと教えた

上の二つも大切ですが、これが一番重要と思っています。

何も知らない新人時代に教えられたことは、それが100%正解と思ってしまいがちです。

ですが、先輩が教えた方法も色々なやり方があるうちのひとつでしかありません。

先輩がすごく優秀な方であればいいですが、そうでない場合、新人はずっと非効率な方法で業務を続けてしまうことにもなりかねません。

また、仮に優秀な方から指導してもらったとしても、それがその新人にとってもベストなやり方とは限りません。

新人を指導したことのある方は共感していただけると思いますが、つい新人にも自分と同じやり方で業務を進めてほしいと思ってしまったり、他のやり方で進めているのを見ると抵抗を感じたりします。

そうした自分自身の意識を諫める意味も込めて、「私のやり方が必ずしも正しい方法とは限らないから、疑問に感じたら他の先輩にも相談してみてね」と伝えています。

また、私が新人教育の際に常に心に留めていることとして「自分のコピーを作っているわけではない」という思いがあります。

自分と同じ業務の進め方をする人は、たしかに普段は心理的な抵抗がなくてよいのですが、

何かトラブルが発生したときには、スキルや視点の多様性がないと組織全体で機能不全を起こしてしまいかねません。

そうした意味でも、自分が必ずしも正しいわけではない、後輩自身のやり方や自分とは違ったやり方を貫いてもいいという意識付けを行っています。

※もちろんいきなり自己流ではできないと思うので、あくまでも基本の型(と私が思っている方法)を教えたうえで、無責任な丸投げにはならないよう注意しています。

私の新人教育の結果は...

上記のことを意識して新人教育を行った結果、ひいき目に見ても非常に優秀な職員に育ったと思います!(私よりも断然優秀です...)

仕事は早くて正確、同僚や他部署の職員からも信頼の厚い、みな2年目にして部署にとって欠かせない存在になってくれました。

何より嬉しかったのは、比較的フラットに情報共有してくれることです。

今は担当業務が変わってしまいましたが、後輩が担当している業務で得た情報を私にも先回りして教えてくれることで結果として私の業務も円滑に進められたり...etc

助けられてるなあ...と思うことがよくあります。

みな新しい知識獲得に勉強熱心なので、私も後輩に負けてられないぞ!と情報収集や勉強を続ける原動力にもなっています。

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また、後輩から「最初にしっかり基礎部分を教えてくれたことがよかった」と言ってもらえたことも嬉しかったことのひとつです。

私自身は新人時代にその点を詳しく教えてほしいなあと思いながら、五里霧中で社会人1年目を過ごしたためその一言はすごく印象に残っています。

後輩からの言葉は話半分(実質おだて8割)とは分かっていながらも嬉しいものです。

一概には評価できないことも確か

私は何人かの新人を教育してきましたが、その方法が必ずしも正解だったとは言えません。

なぜなら、そもそも入職してくる後輩が優秀だっただけ、という可能性も高いからです。

また、もっと適している方法もあったはずだからです。

そこそこの倍率を誇る大学職員の採用試験を突破しているからか、みな人格的にも仕事の能力的にも高い素養を持っていたと思います。

現に、先述のとおり基礎部分の指導はそこそこに自己流で結果を出している後輩もいました。

間違っても、私の指導方法が良かったからこんな優秀な後輩が育った!と思いあがらないよう肝に銘じています。

それでもここは良かったと思う

それは、メンタル面での不調で求職したり退職したりする後輩がいなかったことです。

(これこそ人によるじゃないか!というのは置いておいて...)

先に業務の全体像や辛い点、厄介なことなどを把握して業務に臨むのと、何も知らない状態で飛び込むのとでは感じるストレスの量や質が全く違うと思います。

メンタル面は内に秘めている部分のため、私が感じ取れなかった不満は数え切れないほどあったと思います。

ですが、結果的に退職する新人は誰もいませんでした。

また、それには気軽に相談できる関係性であったことも大きかったと思います。

後輩から先輩である私に効率化につながる提案をしたり、新しい方法をトライしたりした経験も自信につながり、比較的フラットな関係が築けたのではないかと感じています。

それって舐められているだけでは?と思った方もいるかもしれませんが、不思議と先輩(私)への敬意は感じるんですよね...

私の気のせいだとしても、先輩である自分が現にこう感じているので後輩のコミュニケーション方法は正解なんだと思います。

まとめ

いかがだったでしょうか。

色々と書いてきましたが、私もまだなにが新人教育の正解なのかは分かりません。

私自身も20代で組織では下の立場ですので、視座が低いと感じる点もあったと思います。

また、新人指導の成功・失敗は短期的には測れないものですし、基準も人それぞれです。

ここまで読んでいただいた方はすでにお分かりかと思いますが、あくまでも私の方針は

「見て盗む」より「知って楽できることであれば楽しちゃおう!」です。

現に私の部署でも、教えられないとなにもできない人になるぞという意見もあったのですが、

結果的に後輩は短縮できた時間をさらなる改善に役立ててくれています。

ですが、今後入ってくる後輩はまったく違うタイプである可能性もあります。

どんな新人でも心身を病まず、能力を引き出せるような指導を目指しつつ、

自分自身も環境にあわせて柔軟に変化し続けられる存在でありたいなと思います。

この記事がなにかのヒントになれば幸いです。

お読みいただきありがとうございました。

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