はじめに
今回は医大職員(事務職)のキャリア観(現時点&将来)について書こうと思います。
この記事の内容は、私自身の考えや同じ法人内の方と話している中で感じたことが主な情報源です。
同じ法人内でも配属部署によってはまったく考え方が異なりますし、他の法人であればなおのことです。
そもそもキャリア観が他者と一致することなどそうそうありませんので、数あるなかの一類型と思って読んでいただければと思います。
※私自身、私大職員に関するブログ記事などを読んでいて、(こんな法人あるのかな...?)(こんな限定的なケースをさも多数派のように言われても...)と感じることが多いので、
「あくまでもケースの1つ」ということを強調する長い前置きを書かせていただきました。
最後には私が考える医大ならではの良さも書いてみました。
採用条件による違い
今回私は医学部を有する私立大学(学校法人)を前提とします。
医学部を有するということは、研修施設として附属病院も有しており、職員として病院に配属されることもあります。
事務職員はジョブローテーションによって大学と病院間を異動していきますが、法人によっては採用段階からキャリアコースを分けて募集しています。
①大学・病院両方で勤務(法人含む)
②大学・病院のいずれかで勤務
③その他の部門で勤務 など
おそらく労働環境やキャリア観のミスマッチを防ぐために②③が出てきたと思いますが、
私の知る限りでは、まだまだ①で採用される方が大多数だと感じます。
今回の記事は私自身も属する「①大学・病院両方で勤務(法人含む)」を中心に取り上げます。
②③については私もそこまで多くの方と接したわけではないので、キャリア観以外にも印象などをざっくり紹介します。
②③は読み飛ばしてもOKです。
②大学・病院のいずれかで勤務
まずは、大学か病院のどちらかだけで勤務することを前提として採用された方です。
そもそも採用時点でそれぞれの専門分野で働くことを想定して入職しているため、「医大職員」というより「(医学部のない)私大職員」または「病院職員」という意識が強い気がします。
そのため、私の知り得る限りでは「自身の専門分野で見識を高めよう、頑張っていこう」という方が多い印象です。
転職を考えることはあっても、①③の方と比べるとそこまで退職する方も多くありません。
どうしても専門職としての色が強いため、上層部へ出世する人は①より少ないですが、
そもそも「出世欲バリバリで頑張るぞ!」というよりは、「出世はそこそこにぼちぼち働きたい」という方が多い印象です。
③その他の部門で勤務
②と同様、特定の部署で専門的なスキルを活かして働く方々です。
配属先としては人事や財務、キャリアセンター、経営部門など法人によって様々です。
そもそも専門的なスキルを有していることが求められるため、民間企業からの転職者が多いイメージです。
他企業での勤務経験から、基本的には自身のキャリア観が定まっている人が多い印象ですが、
大学という環境はやはり民間とは考え方や環境が大きく異なるようで、
業務内容に不満や物足りなさを感じてすぐにまた転職、という方も多いです。
①大学・病院両方で勤務(法人含む) のキャリア観(現時点)
ようやく本題に入ります。
私の所属する組織では、圧倒的にこの①に属する方が多いです。
いわゆる「総合職」として、新卒から入職する人が多く、(他の業界の知識も少ないため)十人十色のキャリア観を持っています。
そんななかで私が見聞きした圧倒的多数のキャリア観(現時点)は「病院よりも大学・法人で働きたい」というものでした。
・・・
少し前に、私大職員というのは就活市場においてかなりの人気を集めました。
根幹には「ホワイトで高給な私大で働きたい」という意識があり、私大のなかでもブラックと揶揄される医大を目指す方は
「病院もある大学で働きたい!」というより、「病院もあるけど大学だから…」といった消去法的な考えの方が多いイメージです。
極端に言えば「病院配属はハズレ」と考えています。
もちろん病院で働くことを志して入職し、病院を中心としたキャリアを歩んでいきたいという人もいます。
ですが、人数としては少ないです。
※私は「私大はホワイトで高給」とは思いません。特例的にはそうした大学・部署はあるかもしれませんが。
・・・
私も医大職員として大学と病院の両方で勤務した経験がありますが、(本学の場合)たしかに病院職員の方が辛いです。
大学(法人)部門といっても入試関連部署や決算期の財務にいたわけではないので本当の地獄は知りませんが、
少なくともそうした一部の部署を除けば病院の方が圧倒的に大変(ストレスフル)でした。
さまざまな理由がありますが、一番の大きな要因は「時間のかかる業務が多く残業時間が長い」です。
その根幹には、医療機関を取り巻くシビアな環境があります。
コロナ禍で色々な影響が出ている昨今、SNSなどで医療関係者の愚痴などを見てみると、業界に染みついた悪習の片鱗が垣間見えると思います。
その労働環境は事務職員にとっても無関係でないことは想像に難くないと思います。
大学への志望度が強い人であれば、大学職員という職業に抱いていたイメージ(&幻想)とのギャップが、その辛さをさらに強調するのだろうと思います。
今は転職のハードルがどんどん下がっているので、「とりあえず早く辞める」「別の学校法人に転職する」ことを考えている人が相当数います。
そして優秀な人から抜けていきます...。
①大学・病院両方で勤務(法人含む) のキャリア観(将来)
将来どうなりたいのかというキャリア観(将来)についても、「病院ではなく大学(法人)部門で働きたい」という方が多いです。
理由は同じく残業時間の長さです。
5年目くらいまでのフレッシュな世代だけでなく、子どもがいる世代の課長や係長、
その他の先輩も業務量から残らざるを得ない状況のため、将来の自分を重ねてしまうのだと思います。
(私自身もそうでした…笑)
特に今の若い世代はバリバリ仕事して出世するより、仕事はほどほどにプライベートな時間での自己実現を重視します。
世の中全体の潮流ともマッチして、今後もこの医大職員の多数派のキャリア観を変えていくのは難しい気がします。
このキャリア観がもたらす弊害
それは医療の質の低下と非効率な院内体制の発生だと思います。
大抵の職員は、志望していない病院部署に配属されたとしても、そこそこのパフォーマンスを発揮します。
極端に不真面目な人はそこそこの採用倍率の選考で切られているので、振られた仕事はこなすという人が多いです。
ですが、個人のモチベーションを原動力とする業務改善や医療環境への学習は不十分であると感じます。
医療行政の展望への無知、業界を取り巻く現状、PCスキルの低さなど、民間病院の方が見たら卒倒するであろうレベルの職員もいます。
・・・
病院では医者が診断・処方し、その他の医療職が患者をケアしたりサポートすることによって収益が発生します。
その中で、事務職員というのは欠かすことのできない兵站部門です。
研究や先端医療で大学病院は世間をリードしていることは確かですが、
医療職だけが頑張っても、それをコントロール・サポートする事務部門がきちんと機能していなければ、病院全体として収益、経営効率を上げることはできません。
・・・
大学病院のなかにはソフト・ハードの両面から先進的な取り組みを進めていたり、安定的に収益を獲得している病院もあります。
ですが、その反面「大学病院」という看板・ブランドのみで経営が成り立っている旧態依然とした病院もあると思います。
例えば、毎年確実に卒業生から各職種の人員確保ができることは大学病院が当然のように享受している恩恵ですし、
何か機器を購入する際も、メーカーの導入実績づくりとして有利な条件で交渉ができたりします。
・・・
社会的な責任や期待も大きい大学病院に勤めているのですから、
前述のアドバンテージの分だけ何かの手を抜くのではなく、
その分の労力やお金を他のことに使ってほしいなと思います(自戒)。
医大職員ならではの面白さを考えてみる
ここからは、少し視点を変えて、他の大学にはない医大(大学病院)ならではの面白さを考えてみようと思います。
医大職員で病院配属になった方にも読んでもらえることを祈って...
色んな職種と関わることができる
大学病院はとても沢山の職種によって成り立っています。
仕事で何気なく関わっている医師、看護師、薬剤師、etc...
こんなに多種の国家資格を持つ人たちが一同に会して働いている環境もそうそうないのではないでしょうか。
職員の数も多いので、タテヨコ様々な人脈づくりができると思います。
自然と築いた人脈はいつどこで役立つか分かりませんよ!
医療の知識が得られる
意識せずとも医療の知識が得られます。
「色んな職種と~」と重なる部分もありますが、仲の良い薬剤師から薬について詳しく教えてもらったり、
放射線技師からMRIのアレコレを教えてもらったり...
思い返してみてもなかなか面白い経験ができる環境です。
大学職員であれば教員から最新の研究や、学問についての小噺を聞くことができますが、
日々の生活や人生に直結する医学の知識を聞けるのは医大職員ならではのメリットです。
例えば、コロナ禍によってテレビでも手洗いや手指消毒の重要性が説かれるようになりましたが、
大学病院で働く方であればとうの昔から知っていたことではないでしょうか。
ライフステージに合わせて必要な知識がその道の専門家から得られることも利点だと思います。
大学の経営を支えていることが実感できる
大学の財務諸表を見てもらえば分かるように、良くも悪くも大学病院が経営に与えるインパクトは大きいです。
おそらく大学の他部門よりも、病院では月次統計などシビアに経営の数字を追っています(追わされます)。
地域連携に注力して紹介数が増えた、施設基準の届出で数千万円利益が上振れした、担当した補助金申請で数千万円分の機材が購入できた、etc...
このように自分の頑張りが数字となって表れる場面を考えると枚挙にいとまがありません。
私が働いている総務部では数字に表れない業務も多いですが、
業務フローの改善によって院内全職員の手間を減らせた、担当した広報が病院の顔として世に出た、etc...
など、面白さを感じられる場面は多数あると思います。
大学職員と病院職員という二つの顔を持てる
これが一番大きいと思います。
大学と病院、それぞれの文化や知識を得ることができることに私は面白みを感じます。
それぞれで得たノウハウをもう一方で活かせることもあります。
大学では学生はどのようなプロセスを経て国家資格を取得するのか、病院ではどのような実習を行っているのかなど、相互に関わる知識を業務を通して知ることができます。
・・・
たとえば病院実習を例にとると、
・大学はどのような連絡、調整を経て附属病院に実習依頼を出しているか
・病院は大学からの依頼、連絡をどう感じ、どのような手続きを行っているか
この両者の立場を経験できる環境というのはなかなかないと思います。
ちなみに私は両方を経験したことがありますが、大学部門にいた際は年間の業務のひとつとして何も考えずこなしていました。
一方、病院部門では「なんでもっと早く連絡してこないんだ!!結構重要な変更事項もあるのに!!」と憤っていました。
きっと同じことをしていたんですけどね...笑
・・・
このように二つの顔を持てることで、組織外の方と接する楽しさも増えていると実感します。
大学職員と病院職員、それぞれでしか関わることのない人たちと情報交換をしたり、考え方の違いを学ぶことができます。
多様な異動先がある
これは人にもよるところですが、私はいい点だと思っています。
医療機関と教育・研究機関を異動するのはもはや転職です。
大学職員(医学部なし)の異動は転職、とはよく聞きますが、大学病院と大学間の異動はその比ではないのではと思っております。
入試担当が次の日から医事課で電カル叩いていたりするので、「仕事に飽きたくない」という人にはこれ以上ない環境です。
法人にもよりますが、どんなに嫌な仕事や同僚でも数年すれば異動です。
大学も病院も結構閉じた世界なので、人間関係などに苦しむ人もいます。
そうした方にとっては合法的に抜け出せる「異動」というシステムは助けになると思います。
・・・
本当はまだまだ面白い点、良い点もありますが長くなりすぎるので割愛します。
とはいえ...
医大職員のキャリア観や仕事の面白さを挙げてみました。
良い点を強調したつもりです笑
大学病院という社会的な責任や期待の高い環境で働くことは学びも多く、働いている人にも誇りを持ってほしいなと思います。
特にコロナ禍ではその重要性や、これまで感じにくかったやりがいを感じている医大職員の方も多いのではないでしょうか。
とはいえ、やはり医大職員はキツイことも多いです。
そうした際は転職を考えてもいいと思っています。自分の心身より大事なものはないので。
大学・病院両方の知識を持っているということは、転職の選択肢として病院も増えます。
この記事を読んでくださった(特に若手の)医大職員の皆さん、
転職市場ではこれまで取り組んできた仕事やノウハウをじっくり見られると思いますので、
医大が嫌なら嫌でもいいけど、自身の選択肢を増やすためにも普段の業務や自己研鑽を頑張ろう!
というメッセージでした。
ありがとうございました!
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