【石川県・金沢】藤井病院の診療報酬不正と保険医療機関指定取消について思うこと

火曜日, 2月 23, 2021

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 2021年2月17日に、石川県金沢市にある藤井病院は保険医療機関の指定取消を受けました。

このことについて思うことを書いていきます。


藤井病院について

名称:医療法人社団 博洋会 藤井病院

所在地:石川県金沢市古府1-150

診療科・外来:脳外、整外、消外、循内、内科、神内、呼内、ウロ、眼科、肝臓外来、甲状腺外来、理学療法、作業療法、言語聴覚療法

病床数:105床(一般34床、地域包括ケア6床、回復期リハ25床、療養40床)

職員数:140名

各種指定:救急告示(二次・石川中央医療圏)、難病指定、臨床研修、金沢すこやか検診 など

藤井病院の診療報酬不正について

今回藤井病院が問題となったのは、看護師の配置数が基準を満たしていないにも関わらず、虚偽の届出をして不正に診療報酬を受け取っていたためです。

医療関係者でなければ、どういった点が問題なのか分かりづらいと思いますので、説明もかねて思うことを書いていこうと思います。
(詳しい方は次章まで飛ばしていただいても結構です)

※記載する内容は一次情報ではないため、その点はご了承のうえお読みください。

今回、看護師の勤務実態や配置数を実態とは異なる報告をしていたとのことですが、

これが何の問題にあたるかというと「施設基準」です。

施設基準を大まかに説明すると、医療機関の機能や設備、診療体制、人員配置、サービスについて定めた基準です。

基本診療料・特掲診療料という大きなカテゴリーに分かれており、それぞれに多くの項目、基準が定められています。

これらの基準をクリアした医療機関は、各地方厚生局に届出を行うことで、診療報酬を追加で算定することができるようになります。

患者1人あたり、治療1つあたりの単価が上がると思ってもらえれば分かりやすかと思います。

そのため、施設基準算定の有無は病院の経営を大きく左右します。

これらのお金は国民が納めた税金から支出されており、社会的影響・責任も大きいです。

そのため、不正が発覚した場合その医療機関では一定期間保険診療が行えなくなります。

保険診療が全面的に停止されると患者は自由診療で医療サービスを受けることとなり、通常3割負担の医療費を全額負担することとなります。

結果として入外患者数は激減し、経営に大きなダメージを与えます。

藤井病院の診療報酬不正について思うこと

私はこの問題はどこの医療機関でも起こり得ると思っています。

病院関係者は同じご意見の方も多いのではないでしょうか。

今回の件は看護師数の不足がそもそもの原因だったとのことですが、施設基準で一番ネックになるのはおそらく人員配置です。

私も施設基準に関する業務に携わったことがありますが、看護要員配置数には特に注意を払っていました。

理由として、看護師の配置数を求められる加算が多い(&影響が大きい)こと、

看護師は女性が多く、結婚や出産にともなう退職者が多いことがあります。

要員が不足した場合は加算を1グレード下げるか人員補充をするわけですが、後者は採用コストがかかることを考えると、今回のような不正をしてしまう病院もあるんじゃないかな...と思います。

施設基準に関する査察も数年に一度ですし、(1ヶ月だけこのままの体制でいこう...)という対応をするところも結構ある気がします。※もちろんアウトですが

このニュースを見てヒヤッとした方や、自分の組織を省みてあまり責められないという病院職員も多いことでしょう。

...と、正直同情してしまうところもあるんですが、今回ここまで長期間不正を続けていることを考えると組織体制・倫理に大きな問題があると言わざるを得ません。

意思決定プロセスやどういった組織体制なのか、地域の方の評価も気になるところです。


今後について

藤井病院に話を戻すと、今後は入外ともに患者が減りそうですね...。

二次救急の指定を受けていることを考えると地域医療における影響も大きいと思います。

色々な事情があるかとは思いますが、社会的責任はやはり大きいですね。

今日、経営が安泰という病院は少なく、組織の最大のコストである人件費から削られるのは自明の理です。

そうなると、医療従事者のおかれる環境はますます悪化していくんではないかと思っています。

ニュースでは社会保障費、医療費の減額ばかりが叫ばれますが、病院の収益構造の見直しも同時に行われていく必要があると思います。
(特に不採算部門の医療を提供している病院・診療科)

コロナ禍で明らかになったように、これまで気力と体力だけで乗り切ってきた医療業界の労働環境が今後改善されていくことを願います。

医療者へのささやかなメッセージ

全国の医療に携わる皆さん、この件を他山の石として病院のグレーゾーンや不正をなくせるように、これからもともに頑張りましょう!(監査も厳しくなりそうですし...)

では「そのために何ができるか」ということなんですが、些細なことから取り組めます。

例えば、医事課や診療情報管理士の事務員から「カルテにこの情報を記載してください」「データの取り込みをお願いします」と口うるさく言われている方も多いと思います。

こういった作業を欠かさず行っていただくだけでも、適切な保険診療を支えることになりますよ。

不明な点がある際も、事務部門に確認していただけると結果的にお互い楽になりますよ!


以下余談です..

このニュースについて書くにあたり藤井病院のホームページも見ていたんですが、新着情報「保険医療機関指定取消」の下に「新型CT装置導入」のお知らせがあることに、若干のわびしさを覚えました...

そのお金があったら人員配置はなんとかなったんじゃないのかなあ...なんて。


お読みくださりありがとうございました。


参考:医療法人社団 博洋会 藤井病院ホームページ

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