大学病院の立地から見る医大職員の異動について【医療職・事務職】

日曜日, 5月 30, 2021

環境 待遇

t f B! P L

医大に勤務する方にとって避けて通れないのが「異動」です。

多くの医大は複数のキャンパス・附属病院を有しているため、医大職員は職種問わず附属病院間の異動があります。

そこで今回は、医大職員の異動や暮らしへの影響を立地の面から考えて書いていきます。

立地の面から考える、といっても産業立地論なんて分かりませんのでざっくり「住む場所」について職員の目線で書いていこうと思います。

例によって何かの答えがあるわけではありませんが(分かる分かる、そうだよね)と思っていただけたら嬉しいです。

就職先として医大職員を考えている方にも読んでもらえると嬉しいです!

(目次のエラーはスルーしてください...)

今回の対象

今回は、東京都内に附属病院がある&2つ以上附属病院を有する私立大学に絞ります。

※この記事を読んでいる方はご存知のとおり附属病院が1つしかない大学もありますが除外しています。

※住所や名称などの情報は2021年5月時点のものです。

羅列するとこんな感じです。

(抜けているところがあったらすみません)

・北里大学(北里研究所)

・順天堂大学

・昭和大学

・帝京大学

・東京医科大学

・東京慈恵会医科大学(慈恵大学)

・東京女子医科大学

・東邦大学

・日本大学

・日本医科大学

※東京歯科大学、日本歯科大学は医学部がないので除きました。日大はマッピングのレイヤーが足りないのでひとまず除きました。

忘れていない限りすべて記載したと思うのですが、最近どんどん規模を拡大しているあの大学は入っていません。それは後ほど。

・・・

まず異動について、

書いておきながら言うのもなんですが、別に医大に限ったことではないんですよね。

医療法人グループはこれから書いていく以上のこともあると思いますがご容赦ください。

さて、異動の頻度については各大学で様々ですが、一般的な職員は3~5年くらいで異動するのではないでしょうか。

辞令から2週間くらいでしょうか?早い人だと数日後に異動なんてこともあります。

基本的には辞令に逆らう人はいないと思うので、栄転・玉突き等否応なく職場が変わります。

環境が変わって喜ぶ人もいればその逆もいる、なかなか混沌としたイベントです。

・・・

前置きが長くなりましたが

なにはともあれ上記の大学の附属病院・クリニックの位置をマップで示してみました!

医療職の方の異動候補となり得る施設といったイメージです。

皆さんがなじみ深い大学はどれか分かるでしょうか?

大学ごとに色を変えていますので見てみてください。

こうして見るとどこの大学も山手線内、俗に言う「都心」近辺に1つは病院を設置していますね。

大学本部が都心にあり、セットで附属病院(本院)があるといったところでしょうか。

そして郊外に複数の病院を有していることが分かります。

病院の立地には医療政策や行政機関の意向も大いに影響するので、最新の医療を提供する(&そのイメージがある)大学病院を誘致したという経緯もあるかもしれません。

上記の地図から、昼間人口が多くその名のとおり都市の中心である「都心」+生活圏である「郊外」に病院が立地していることが分かりました。

ここで異動に話を戻しましょう。

はじめに、これらの病院間を異動すると考えるとどうでしょう?

おそらくどの病院間も、電車で1時間以内に移動できると思います。

地図上は遠くにあるように見えても、鉄道会社が共通・相互乗り入れなどで時間距離は案外短かったりします。

ですが、住む場所となると話は別です。

・・・補足・・・

私自身も地方出身なので、地方にお住まいの方に向けてざっくり事前説明です。

首都圏(東京)ではほとんどの方が電車(バス)通勤です。

そのため、通勤に使う路線・駅というのは住む場所を決める大きな要素になります。

「東京は路線や電車が多くてみんな利用している」というイメージは地方在住の方にもあると思いますが、こと通勤となると想像以上に電車に依存して生活しています。

また、家賃も高く都心には住めないので、1~2時間くらいかけて通勤してくる方はザラにいます。

・・・

私は不動産事情や立地論等は全く分かりませんが、自分が住む場所を決めるときは「職場まで1時間以内」というのは死守したい条件です。

職住近接が理想ですが、東京都の家賃事情を考えると独身20代の職員にはまあ理解してもらえる妥協ラインではないでしょうか。

今回はこれを前提としたいと思います。

これを先ほどの地図に反映するとこんな感じでしょうか。

赤いエリアが住居選択の候補、グレーは個人的には家賃が高くて住めない地域です。

この範囲内であれば大抵の場所(病院)には1時間以内で行けると思います。


関東圏にお住まいの方には(まあこんなもんかな)と共感いただけると思います。

また、幸い大学ごとに「東京+神奈川方面」「東京+埼玉方面」「東京+千葉方面」のように首都3県のいずれかの方面に伸びて病院は立地しています。

となると、選択肢となる路線も絞りやすくなります。

神奈川であれば京急・東急・京浜東北線、埼玉であれば西武・東武・埼京線、千葉であれば武蔵野・内房線、そしてそれぞれに地下鉄が加わる感じだと思います。

(JRや相互乗り入れ事情は割愛します。)

ここまで読むと、通勤1時間程度ならどこの企業でもあるしまあ普通じゃない?と思うかもしれません。

ここからが本題です。

多くの大学に存在する「異端児」

先ほどの地図を見て、大学病院に勤務されている方には

(あれ!?私の勤務先がない!!)と思われた方もいるかもしれません。

そうです、先ほどの地図は東京都とその他一部しか載っていませんでした。

ではもう少しズームアウトするとどうでしょうか。

はい、もう言いたいことは分かっていただけたかと思います。

いるのです。異端児が。

まず静岡県に附属病院がありますね。

これだけ離れているといっそ諦めもつくと思います。ほとんどの場合「転居をともなう異動」になるでしょう。

ライフプランを大きく左右することには違いありませんが、「引っ越しは必須」という現実から諦めの境地に至れていっそのこと楽かもしれません。

問題はそれ以外の病院です。

千葉県や茨城県に所在する病院がいくつかあることが分かります。

・・・

・・・

どうするんですかこれ…

先ほどの赤い図をこちらにも表示するとこんな感じです。

この候補エリア内で「異端児」を考慮するとどうなるでしょうか。

運良く1時間以内に収まる場所が見つかるかもしれませんが、この赤いエリアからだと多くの場合は1時間以上かかると思います。

「異端児」を加味して赤いエリアを描き直しても、どこかの病院は必ず1時間圏内からはみ出してしまいます。

ここで思い出していただきたいのは、この赤いエリアというのはあくまでも住む場所を決める最初の段階(フィルター)ということです。

ここから希望の住環境等を考えていくとなると、さらに住む場所や部屋の候補は狭まっていきます。

そしてこれらの病院の立地がまた罪深いのが「じゃあいっそ引っ越してしまおう!」とならないギリギリの場所にあることです。

その理由は引っ越しにかかるお金が大きいこともありますが、それだけではありません。

というのも、東京での部屋探しは本当に大変だからです。

先述の家賃等の制約からすべての希望を満たす家に住むことはそうできるものではないので、皆なにかしらの点を妥協して今の家を選んでいます。

そこから引っ越すというのは「また部屋選びをしなくてはならない」「今住んでいる家に戻ることはできない」「家族にも負担を強いる」ことを意味します。

これらのコストを避けて、1時間以上の通勤を選ぶ方が出てくるというわけです。

影響が自分のことだけで済む若手ならまだしも、お子さんがいる先輩方を見ると、それってどうなんだろう...と思うことがあります。

この有無を言わさぬ異動が医療職の離職を加速させる大きな要因のひとつなのではないでしょうか。

ではどうすればいいか

寮に住む

自由を引き換えに寮に入るという手があります。

どこの病院も福利厚生の一環として職員寮を用意しており、かなり安価で住むことができます。

(当直や不規則な出勤もあるため、寮がないと人が集まらないほど必須なものと看護部長から聞いたことがあります)

また、病院に近接していることが多く、通勤のストレスからも解放されます。

運営も大学が行っているため、一般の不動産業者よりは職場の都合に対して色々な融通が利くと思います(あまりにも無理なことを言うのはやめましょう)。

大学にもよりますが、異動の際は寮から別の寮に引っ越すことも可能なのでぜひ検討してみてください。

注意点としては、職場とあまりにも距離が近いため仕事の緊張が取れない、生活エリアが同僚と重なるため私生活でも同僚と会ってしまう、などでしょうか。

・・・余談・・・

寮の部屋を出た後は誰が何を見ているか分かりませんのでくれぐれも注意してください。

どんちゃん騒ぎや迷惑行為を起こした若手看護師のタレコミがあり、看護部長とともに共用部の監視カメラの映像を観たこともあります。(しっかり個人が特定できました)

あの看護師さんその後どうなったんだろう...

・・・

ちなみに寮は都心であればあるほど生活コストや通勤コストが大きく減らせるので結構人気です。

他大学の職員に聞いたところ「〇年目には退寮」などきちんとルールを定めていないとみんな寮から出ていかないので追い出しが大変らしいです。

上の年次が居座るため新人が入寮できない、なんてことも起こり得ます。

遠い配属先のことは忘れる

正直なところ入寮を超える最適解を提案できませんが、そもそも遠い病院のことは考慮しないというのも手だと思います。

職員配置を考えると、多くは本院に集まっています。

附属病院の数にもよりますが、職員配置数が本院:分院合計=1:1くらいなところもあります。

何が言いたいかというと、そもそも立地「異端児」の病院には配属されない可能性も大いにあるため、それを前提に住む場所を決めてしまうのがよいのではないかということです。

これだけその他の病院と距離が離れていると、辞令が出る前からこの遠い病院への配属を考慮して部屋を決めると普段の通勤が大変です。

ですので、あくまで普段は考慮せず赤いエリア内に住み、異動が決まってから入寮を含めて引っ越しを考えるというプランをおすすめします。

転職

異動に限らずどうしても耐えられなければ転職しましょう!以上!

病院の仕事を辞めたいあなたに読んでほしい記事

医大職員のキャリア観と仕事の面白さについて※個人の感想です


医療職の方、もしお忙しいようでしらまとめまで飛ばしていただいても構いません。

お時間がある方や事務職の事情に少しでも興味がおありの方はぜひ読んでみてください。

事務職員の場合...

今回は医療職を中心に紹介してきましたが、まだ読んでくださる方には事務職員の場合も紹介したいと思います。

まだ読んでくださっている医療職の方、ありがとうございます。

医療職の方は附属病院間の異動がメインかと思います。

しかし、事務職員は附属病院に加え、大学・法人も異動先として存在しています。

これまで挙げた地図に、大学・法人も反映させてみます。

(都内はほぼ見えません。すみません。)

※東海大学や帝京大学のように医学部以外の学部もある場合は、医療系の学部のみ掲載しました。

・・・

・・・

概ねキャンパスと病院がセットですが...異なるところもちらほらありますよね。

見かけ上近くても路線が違うなんてこともあります。

そうすると通勤時間が思いのほか長くなったりします。

こうした大学の職員は異動先の立地で一喜一憂しそうですね。

山梨や静岡のキャンパスか~大変だな~と思っていたんですが、こんなところもありました。

Oh...

実際はどこまで異動対象なのか分かりませんし、地域枠採用があったりするのかもしれませんがこういった大学もあるようです。

ちなみにこの大学はもっと遠くにも施設等がありました。今回は削りましたが...

医大の事務職員は「どこの病院に配属になるのか」だけでなく、「病院なのか大学なのか」というところも悲喜交々のもとですよね。

病院はもういい!大学に!と思っているあなた。

ご安心ください、そういう方に限ってタフなので次も病院です。

同じ医大職員として働く皆さん、今後も異動ガチャに翻弄されながら頑張りましょう。

最後はこちらの大学をご紹介

さて、最初の方で後ほど紹介することにした大学があります。

それは「国際医療福祉大学」です。

最近どんどん勢いを増しているこちらの大学、元々の病院グループの力も後押ししてかどんどん新しい学部学科を増やしています。

何かと新しいことにチャレンジしている印象があり、つい注目してしまいます。

この国際医療福祉大学、採用サイトを見たところ、医療職は病院ごとに採用しているようですが事務職はなんと「総合職」として全エリアが異動対象の募集がありました。

(関東・九州エリアなどのエリア総合職、地域限定職もあるようですが)

それでは地図で見ていきましょう。

青色のピンを立てています。

・・・

・・・

...きっとなんだかんだ異動者は少ない・現地採用が中心などなどの事情があるのでしょう。

そう思いたいです。

ちなみに赤いのは日大です。最初の一覧で入りきらなかったのでこちらに入れました。

まとめ

皆さんの勤務している大学やなじみの深い病院はありましたでしょうか?

こうしてみると医大は色々な異動先があってライフプランが結構左右されそうですね。

お子さんがいる方にとっては特に大きな影響がありそうです。

また、複数の異動先を考慮するため、通勤時間が長くなってしまうところは本当に悩ましいです。

ですが、個人的には色々な異動先があることは必ずしも悪いだけとは思いません。

病院に限ったことではないですが、どうしても病院やキャンパスごとに閉鎖的な世界は形成されてしまいます。

特に病院は多くの職種が一同に会していますし、当直等で長い時間を共にすることもあるため、人間関係の良し悪しが働きやすさに大きく影響してきます。

そのような環境では異動はその組織を抜け出せる大義名分になります。

・・・

かくいう私も「異動ウェルカム!」とまではいかないですが、これまでとは異なる環境で新しいことを学べることは素晴らしいことだと思っています。

ですが、やはりライフステージが変われば考えも変わるもので、しっかりと将来を見極めないといけないなと感じました。

先に挙げた入寮・転職などは年齢を重ねるにつれて難しくなっていきます。

今は大丈夫、という方も今一度職場の異動について捉え直してみるべきかもしれません。

「医大に就職したら異動はつきもの」であることは皆さん一度は考えたことがあると思いますが、他大学のことは意外と知らないと思います。

また、これまで大学病院の立地をピックアップした情報にアクセスしたことがなかったので自分の手でまとめてみました。

医大に勤めていて異動に辟易している方、これから就職先を選ぶことになる方にとって有意義な記事になっていれば幸いです。

お読みくださりありがとうございました!

余談

この記事、結構大変でした。(笑)

内容はさておき、この地図を作成するために何か住所がまとまったものはないかな~とネットを探していたんですが、なかなかないんですよね。

誤った情報を流すのも忍びないので各大学のホームページから情報を集めてExcelに反映→Googleマップに反映を繰り返しました。

その時に分かったことがいくつかあるのでご紹介します。

ホームページが分かりにくい。同じ場所から同じ情報を引き出せない。

これはブーメランになりかねないのですが、同じ大学の附属病院でもサイトの構成が全然に違うんですよね。

病院概要に病床数が書いているところもあればさらに深い階層に記載されていたり、分院A
のサイトにはある情報が分院Bのサイトにはなかったり...なんとかならないのかと思ってしまいました。

普段はそうしたクレーム(ご要望)に「どうでもいいでしょ...それどころじゃないよ...」と思ったりもしていましたが大いに反省です。

スクールカラー

実は制作にあたり、地図上のピンの色はスクールカラーを反映させようと思ったんですけど思いのほか色が被っていたので断念しました。

医科大学って紫や紺が多いんですよね。不思議でした。

どの大学でも高貴な色として選ばれたんでしょうか?(たしか冠位十二階では最高位の色ですよね)

とにかく時間がかかりました…

繰り返しですがこの記事、単純作業を繰り返すことになかなか時間がかかりました。

ここまで読んでくださっている方がいることを本当に嬉しく思います。

他の方のブログを読んでいてもポジティブな要素しか感じられないことも多いのでそんなことも書いてみました。

それでは本当にありがとうございました。


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