このニュースは以前から取り上げられていたようですが、今回はあらためてこの件について思うことを書いていきます。
※対策のアイデアは最後に挙げますが、明確な解決策ではないことを前提にお読みください。
西宮病院病院について
名称:兵庫県立西宮病院
所在地:兵庫県西宮市六湛寺町13-9
診療科:循内、腎内、血内、消内、小児、外科、脳外、整外、ウロ、ギネ、救急、眼科、耳鼻咽喉科、リハ、放射線科、麻酔
※外来案内には診療科として、内科、消内、循内、腎内、血内、糖尿病・内分泌内科、腫内、外科、消外、脳外、乳外、整外、形成、リウマチ、小児、ウロ、ギネ、眼科、耳鼻咽喉科、放射線治療、放射線診断、救急
病床数:400床
職員数:約640~680名(データにより差あり)
各種指定:救急告示(三次救急、救命救急センター)、がん診療連携拠点、地域災害拠点、地域周産期母子医療センター、地域医療支援、臨床研修 など
西宮病院医師の無届けについて
本件で西宮病院が何の届出を行っていなかったのか詳細は不明ですが、
放射線診断科関係だとすると施設基準特掲診療料「画像診断管理加算」あたりでしょうか。
施設基準については、先日書いた石川県金沢市の藤井病院の保険医療機関指定取消についての記事でも触れましたが、
このようなニュースを見るたびに、やはり施設基準などの届出は社会的責任のともなう重要な仕事であると再認識します。
届出の際は、加算項目ごとに求められる基準を満たしているか院内のあらゆる情報と照らし合わせて検討し、届出資料作成を行います。
施設基準は経営を左右する重要なものであるという認識自体はどこの病院も共通していますが、
その管理体制へのウエイトの置き方は病院ごとに大きく異なります。
今回の件が本当に施設基準絡みだとすると、意図的に必要な届出を行わないということはまず考えられないので、おそらくチェック漏れだろうなと思います。
西宮病院の診療報酬返還問題について思うこと
施設基準を担当したことがある方であれば、今回のように問題にはならなくても、スレスレの出来事は経験済みではないでしょうか。
「詳しい人」がいない・残らない
施設基準マスターのようなベテランがいれば別ですが、多くの病院ではそうでないと思います。
特に組織が大きかったり異動が頻繁にある病院の場合、ノウハウの継承は常に課題だと思います。
私の勤務する大学病院でも、昨日まで大学の窓口にいた人が、今日は医事課に座っているなんてこともよくあります。
今回の件も異動が多そうな県立病院で起こったことを考えると、そこそこ経験を積んだ人がその矢先に異動する、といった組織としての問題が起きていた可能性もあります。
「定期的なチェック」が難しい
専用のツールなどを導入していればよいかもしれませんが、ExcelやWordだけで施設基準を管理している病院も多いと思います。
施設基準は、特定の業務に従事する職員の人数や、認定資格を有する医療職の人数などの要件があり、該当者をすべて列記する必要があります。
また、機器や施設設備に関わる要件など本当に様々なものがあります。
そのため、担当者は院内の変化に常に目を配る必要があるのですが、
年度が替わるタイミングは特に人事異動があるため、いくつもの書類を修正して出し直さなければなりません。
看護体制などの加算項目は該当職員(看護師)の入れ替わりも激しいため比較的注意が払われますが、
マイナーな診療科に関する加算などは、対象者の異動などの変化が少なく最初に届出を行ってから見直しが行われていないということがあったりします。
定期的にすべての施設基準を点検できれば一番よいですが、大きい病院になればなるほど扱う数も増えるため現実的ではありません。
他にも病院にはこんな届出があります
施設基準のほかにも、医療機関は各地方を管轄する厚生局に様々な届出を行います。
主なものとして「保険医登録」があります。
保険医登録とは、医師が公的医療保険の適用を受ける診療を行うために必要な届出です。
これが何に関係するかというと「保険診療」です。
保険診療は保険医療機関の指定を受けた医療機関で、保険医登録された医師が診療を行うことで成立します。
どちらか片方でも欠けるとその医療機関では保険請求ができなくなり、
自由診療(自費診療、患者は治療費10割負担)となってしまいます。
保険医登録していない医師は実質診療を行うことができなくなるため、病院にとって大変な損失です。
年度替わりや組織内で異動がある場合にこれらの届出を行う(※)わけですが、
どの病院もこの手続きに沢山の担当者を充てているということはまずないと思います。
(※)令和3年2月より、保険医療機関及び保険薬局の指定並びに保険医及び保険薬剤師の登録に関する省令の改正に伴い、同一地方厚生(支)局の異動については、「保険医・保険薬剤師管轄地方厚生(支)局内の管轄事務所等変更届」の提出は不要となりました。
私の病院でも、ダブルチェックはすれど基本的に担当者は1人でした。
病院によってはダブルチェックを経ないまま届出が完了することもあるので、漏れが出てしまう可能性は十分にあります。
あくまでも一部の医師に限ってですが、医師の中にはこれらの書類の重要性を把握していない方もいます。
院内の提出期限が守られず、書類集めに毎回苦労している同僚を見ると、なんとか協力してあげてほしいなと思います。
このブログを読まれている医師の方はぜひご協力をお願いします。
どのように対策すべきか
「人に頼らず、適したシステムを使う」が最適な対策だと思います。
今回の西宮病院の件はダブルチェック体制が機能していれば避けられた可能性がありますが、そのように充実した体制を組むのが難しい現状があるのだと思います。
となれば、そもそも人に頼るのをやめるべきだと思います。
病院は紙でのやり取りも多いため、ついシステムへの投資が後回しになりがちです。
また、働き方としてもITを駆使してスマートにタスクをこなすというよりは
大量の紙仕事も気合と根性で乗り切るといった考え方が残っている気がします。
これでは、仕事の出来は担当者個人の能力に大きく左右され、
ノウハウの継承(引継ぎ)にも時間がかかりますし、ヒューマンエラーも起きやすくなります。
私は「仕事は(担当が変わっても)誰でもできるようにしておくべき」と考えていますが、異動の多い組織は特にそうだと思います。
自戒も込めてですが、私たち事務職も「お金がないから...」と諦めるのではなく
手作業で確認する残業代とシステム導入により削減できるコストを提示してプレゼンするなどの気概が求められていると思います。
最後に
今回の記事を通して、あらためて病院の仕事の進め方から見直しが必要だと思っていただければ幸いです。
他職種の方も、施設基準に関わる重要な変更が発生しそうな際は事前に教えてくれるとありがたいです。笑
こんな記事も書いてるのでぜひ読んでみてください。
コスパ良し。お気に入りです。ぜひお試しあれ。 職場で歯磨きする時間がないときにも便利ですよ~ |
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